口当たりの良い、旅に纏わる掌編エッセイ。
ひとつひとつの話が短く、旅先で手軽に読むことができた。とても読みやすい。短いながらも文章が美しくて、ついつい引き込まれた。
内容は"旅"がテーマだ。ただ、いわゆる旅行記ではない。もちろん、長崎に行った、オスロに行った……という話もあるが、夫の背広から出てくる職場の人の旅行土産、世界中の番組が聞けるインターネットラジオ……といった話もある。
日帰りの旅について書いた「日帰り旅行の距離と時間」には納得した。敷居の高さに関する「逆転現象」には、私もいつかそうなるのかなぁと妄想する。
あれやこれや、"旅"に纏わる話が彩り豊かに並んでいる。これはたしかに、様々な味が転がり出てくるドロップキャンディのような本だと思った。
江國香織といえば、これまで読んだ著作から物寂しい不倫物……のイメージが強かった。明るく清潔で可愛らしい雰囲気のエッセイに驚いた。装丁も可愛くて好き。
JR九州の車内誌「Please プリーズ」に36回連載されたエッセイ+αの内容らしい。
旅先の疲れた頭でふわっと読むに相応しい、優しく転がるドロップみたいなエッセイ。