とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『山岳気象遭難の真実』大矢康裕

豪雨や落雷、豪雪など気象が原因の山岳遭難について、その背景や対策を考える新書。

 

飛行機事故や山岳遭難の話を読むのが好きだ。当時の状況を精査して原因や今後の対応を冷静に整理した分析は面白い。一方で、事故の悲惨さをセンセーショナルに描いた物語は苦手である。

本作は気象に起因した山岳遭難を当時の気象データから読み解く。事故そのものよりも、天気図や気流の状況、気象条件に伴う身体への影響、将来の気象リスクなどに詳しく、興味深く読めた。低体温症に陥る条件や落雷から身を守る方法なども書かれており、本格的な登山をしない人にとっても参考になりそう。

私も山はハイキング程度の素人だが、本作内で繰り返される正しい知識と現状を把握する姿勢、事前に進退を判断するポイントを決めておくことは大切だと思った。低山ハイキングだって、ド素人が何も知らないまま訪れたら、事故に遭う可能性は全然あると思う。気を付けたい。

 

少し苦手に感じたのは、「本作では〜を見事に再現している」「〜をしたのは著者がはじめてだろう」など、やたら自分と作品を持ち上げる物言いが散見されたこと。まぁ、論文ではよくあるやつなので、懐かしいな思ってやり過ごしたい。

 

  • タイトル:山岳気象遭難の真実 過去と未来を繋いで遭難事故をなくす
  • 著者:大矢康裕
  • 出版社:山と渓谷社
  • 読んだ日:2024年3月▽
  • 経路:図書館で借りて