とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『ドキュメント 生還 山岳遭難からの救出』羽根田治

山で遭難・救助された”普通の人たち”へのインタビューを通じて、遭難中の行動や心境、救助の様子を詳しく綴った本。

 

著者の羽根田氏が、実際に山で遭難・救助された人たちに取材して書き起こした文章。遭難中の様子は物語のように表されており、何を考えていたのか、どんな状況だったのかがリアルに感じられた。

山歩きに慣れている人でも、ふっと気を抜いた瞬間に遭難してしまうのだとわかる。慎重な人・慣れた人ほど遭難を自覚するのが早く、動かず救助を待つ決断も早いことが印象的だった。また、遭難中に幻覚を見る人が多いことには驚いた。何を見たか?も詳細に語られるので、人は限界状態になるとこんな幻を見るのか…とうすら寒い気持ちになる。一方で、救助を待つ家族の様子などは心が痛い。

 

山岳遭難の事例紹介では、被害状況をセンセーショナルに煽ったり、当時の判断を訳知り顔で批判したりするものも多い。しかし、本書はそういった過度な煽りや批判はない。あくまで遭難者たちの体験の記録が中心となっていて、安心して読めた。

事故発生日がやたらと古いことに違和感を覚えて奥付を見たところ、初版発行は2000年!今から24年前! 年月が経過しても色褪せない良書だと感じた。

羽根田氏の文章は読みやすいと感じる。これ以外の本も読んでみたい。

 

  • タイトル:ドキュメント生還 山岳遭難からの救出
  • 著者:羽根田治
  • 出版社:ヤマケイ文庫
  • 読んだ日:2024年4月▽
  • 経路:図書館で借りて