とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『負動産時代 マイナス価格となる家と土地』朝日新聞取材班

バブル時代には上がり続けた不動産の価値。

「地価は必ず上がる」「不動産を持っていれば安心」と言われた不動産神話も今は昔。持っているだけで負担となる「負動産」について、当事者に取材した朝日新聞の連載記事を本にまとめた一冊。

 

話題に上るのは「空き家問題」から「原野商法二次被害」、「マンションの管理費・修繕費問題」、「リゾートマンションの価格下落」、「レオパレス銀座」、「固定資産税・相続税」……と幅広い。数多の負動産問題を挙げ連ねていて、読みごたえがある。

 

不動産は仕事に数%ほど関わる分野であって、もともと興味関心はあった。レオパレス銀座はリアルタイムでニュースを見ていたし、実家の周りにボロボロになった空き家が多く空き家問題にも吸い寄せられやすい。それでも、まだこんなに問題があるのか!と驚く種類豊富さだった。

特に、固定資産税の章で挙げられていた「比企ネオポリス」は印象的だった。開発が途絶え、公図さえも曖昧。

 

実際に関係者に取材しており、当事者たちの生の声を聞けるのもいい。いくら大きな社会問題となっていても、表面だけを撫でた文章は印象が薄いし、机上の空論感が否めない。問題を卑近な事象として感じられて、読みごたえに繋がっている。

 

不動産に関してそれなりの関心と予備知識があるからこその読みやすさもあると思う。全くの不動産初心者にとってはどうだろうか。でも、具体例が多数出ていてやっぱり読みやすいとは思うのだが。

特に空き家問題と、マンションの建て替え問題は、これから多くの人が関わらざるを得ない問題だと思う。多くの人がこの問題を認知して、行政の手も入って改善されていくことを願いたい。

 

  • タイトル:負動産時代 マイナス価格となる家と土地
  • 著者名:朝日新聞取材班
  • 出版社:朝日新聞出版
  • 読んだ日:2022年12月
  • 経路:図書館で貸出