とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『死神の精度』伊坂幸太郎

「この人間は八日後の死が相応しいか?」。調査部の死神・千葉と、調査対象の人物を描いた連作短編集。

 

死神・千葉のキャラクターが魅力的。
調査対象を詳しく調べずに「可」を出す死神も多いらしいが、千葉は傍から対象人物をよくよく観察している。一方でその人物に愛着を抱くわけでもなく、原則的には「可」の判断を下す。
ミュージック(人間界の音楽全般)をこよなく愛し、慣用句が理解できない。
どことなく抜けていて、何となく人間味がある。この千葉の視点で描くからこそ、面白いのだろう。

 

また、それぞれの話で「そう来るか!」という転換点、結末が訪れるのも面白い。
ゆるやかに繋がりのある連作なことも、短編で読みやすいのも良い。

 

十数年前……高校時代に一度読んでいるのだが、内容はすっかり忘れていた。新しい気持ちで読むことができ、もう一度楽しめた。年代問わずに面白く読めるということだろう。

 

  • タイトル:死神の精度
  • 著者名:伊坂幸太郎
  • 出版社:文藝春秋
  • 読んだ日:2023年1月1日◇
  • 経路:家族の本棚
  • その他:元旦からこの小説を読んだ結果、初夢は「旅館で起きた連続殺人事件に巻き込まれる夢」と「街が水に沈んで行くのを見て死を悟る夢」だった。薄暗すぎる。来年はもっと明るい小説を読もうかな。