とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『Rのつく月には気をつけよう』石持浅海

大学時代からの飲み仲間である湯浅夏美、長江高明、熊井渚の3人。マンションの一室でレジャーシートと折り畳みテーブルを広げて開催される飲み会は、毎回誰かがゲストを連れてくる決まりになっている。ゲストが提供する話題には、いつもほんの少しの違和感、或いは大きな謎がぽつり。おいしいお酒と肴を楽しみながら、その違和感を紐解いていく…。

軽く読める連作短編集。

 

主に長江高明が謎解き役を務める、安楽椅子探偵のミステリー。とはいえ凄惨な事件は起こらず、食中毒になったのは嘘でしょう?、プロポーズの言葉にそんな意味はないのでは?といったライトな謎。グロが苦手な人も読めるミステリーである。

 

謎解きは「そこまで深読みする??」という、重箱の隅をつつくような推理となっている。国語の授業で「この文章が表す作者の考えを答えなさい」に対する「絶対!作者はそこまで考えて書いてない!!」というアレである。

現実世界で同じような出来事があっても、そこまで深い理由に基づいた言動ではないと思う。そんなに回りくどく生きてないはずだ、人間ってのは。

そのくどさとねちっこさが、読み始めた当初は気になったが、読み進めると慣れてくる。問題ない。次はどんな深読みが飛び出すのか面白くなってくる。

 

文庫本裏表紙に「傑作グルメ・ミステリー!」と書かれている通り、飲み会に登場するお酒とおつまみはどれも美味しそうに描かれている。ペアリングを意識して書かれているので、お酒を飲む人は「わかる~!」ってなりそう、お酒が飲みたくなりそう。私は飲まない人なので、そこの楽しさを味わえなかったのが残念。長江高明がマメな人なので、おつまみを丁寧に用意する描写があるのは良い。

 

あと一つ。ネタバレしないように書くのは本当に難しいのだが、私は人称代名詞をとても気にする人である。わたし、きみ、○○さん……。だから、気になってはいたのだ。ただ、推理のくどさと同様、読み進めるうちに気にならなくなってしまった。気付いたときの「あぁそうか!やっぱりそうか……!」は楽しい。別にどんでん返しとかじゃないけど、こう、書き方が上手いなぁと思う。

 

BOOK HOTEL神保町で選書頂いたうちの一冊。

短編、軽く読めてグロくないミステリー、食べ物がおいしそう、最後にあっと言わされる……。好みをついてきてる。それでいて、自分ではきっと手に取る機会がなかっただろう本だから、出会えて嬉しい。

 

  • タイトル:Rのつく月には気をつけよう
  • 著者名:石持浅海
  • 出版社:祥伝社
  • 読んだ日:2022年12月
  • 経路:BOOK HOTEL神保町で選書していただいた