梶井基次郎の『檸檬』に、イラストレーターのげみさんが描き下ろしイラストを添えた文学絵本。
イラストが綺麗!輪郭が柔らかくて、光が綺麗な絵だった。
暗鬱とした主人公に引き摺られるように、小説は全体的に暗く湿っぽい。そこに差し込む強烈なイエローが印象的なのが小説『檸檬』の魅力だと思う。イラストでは苛烈に輝く檸檬の果実はもちろん、果物屋の店先や南京玉まで、暗い中できらきらと光って見えて素敵だった。
鮮やかなレモンイエローの美しさは知っていたけど、小説全体にこんなにも明暗を対峙させる描写があったのかと驚いた。絵本で知る発見。
主人公がやたらイケメンな事には笑った。斜に構えてインテリぶった、病を患い鬱々とした、借金苦を自覚しながら檸檬なんて買っちゃう男なのに、優男風のイケメンだった。書店で本をぐちゃぐちゃに積み上げて、その上に檸檬(有機物)を置くなんて、本好きかつ元小売店販売員としては看過できない悪行だけど、それが絵になるくらいイラストが良かった。
「乙女の本棚」という大人の絵本シリーズらしい。
『檸檬』の舞台は京都の丸善。学生時代に教科書で読んだはずなのに忘れていた。京都滞在中に出会えて良かったと思う絵本。
- タイトル:乙女の本棚『檸檬』
- 著者:梶井基次郎、げみ
- 出版社:立東舎
- 読んだ日:2023年9月◇
- 経路:ホテル「TUNE STAY KYOTO」にて
- その他:上記ホテルは京都に関わる本を集めた本屋がある。この本は”舞台が京都”から選書されたと思われる。