とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『七月に流れる花』恩田陸

夏城(かなし)に転校して来たばかりの中学生・ミチルは、全身緑色の男から招待状を渡されて、一夏の林間学校に参加することになる。六人の少女だけで過ごす静かで奇妙な生活。この林間学校の目的はなんなのか、ミチルは何故呼ばれたのか。

 

全身緑色の男に追い回されて招待状を受け取ったことに始まり、林間学校は不穏さと静謐さに溢れている。「水路に花が流れてきたら色と数を記録すること」「三回鐘が鳴ったらお地蔵様をお参りすること」といった決まりがあったり、木々と堀に囲まれほぼ軟禁状態での生活だったり、共に過ごす少女たちは不意に口を閉ざすことがあったり――。ひたひたと身に沁みるような、静かな不穏さが美しいと思う。

一方で、明るい日差しの下から木立に入った時の光の明暗や古城を吹き抜ける風など、夏らしい情景描写は爽やかで、不穏さと比較するといっそう明るく感じる。

 

夏、奇妙な古城での生活、少女たち。多少のミステリー要素は含みつつも、基本的には不思議な世界に迷い込んだ少女のファンタジー+青春物語なのだと思っていた。

ところがどっこい、残り2割を切ってから突然のSF要素が顔を出す。テレビのチャンネルを変えたかのような突然の転換に、正直置いてけぼりになった。

しかも、概略だけ語られて様々なことが謎のまま終了する。え、これで終わり?? と思ってしまった。続きは続編『八月は冷たい城』で語られるのだろうか、と思いつつ読了。ミチルの母が自分勝手だな。

 

  • タイトル:七月に流れる花
  • 著者:恩田陸
  • 出版社:講談社タイガ
  • 読んだ日:2024年3月▽
  • 経路:図書館で借りて