とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『八月は冷たい城』恩田陸

夏流城(かなしろ)での林間学校に参加した四人の少年たちは、初日から様々な悪意にさらされる。首を折られた四本のひまわり、ドアの上から降りかかる鎌――。この古城には見知らぬ五人目が潜んでいるのか、それとも「みどりおとこ」が絡んでいるのだろうか。

 

『七月に流れる花』と同じ場所・時間軸の物語。『七月〜』が少女たち、『八月〜』が少年たちのストーリーだ。どちらから読んでも内容は理解できるが、本作は『七月〜』の重要なネタバレを含むので『七月〜』から読むべき。公式のあらすじに『七月に流れる花』の続編、って書くべきだと思う。

 

どちらの作品も、不可思議な出来事が起こって主人公が戸惑い、不信を抱き、疑心暗鬼になるサスペンス要素がある。謎解きの納得感だけなら本作『八月〜』の方が良かった。何故その出来事が起きたのか、登場人物たちの心の動きと行動がマッチしているように感じられた。前作『七月〜』はその辺りにこじつけ感を覚えた。

林間学校に呼ばれた理由を少年たち全員が知っていて、例年に近いだろう様子を見れたのも良かった。慰めたり、心境を分かち合ったり、軽口を叩いたり……こうやって乗り越えて行くのが普通なんだろう。ミチルと共に過ごした五人の少女と、ミチル自身からこの機会を奪おうとしたミチルの母の罪の大きさを感じた。

一方で、全体的な雰囲気は『七月〜』の方が好き。夏の空気感を感じられる。

 

前作から引き継いだ様々な謎が解明されるかと思いきや、依然として謎のままな事象が多く消化不良感はある。でも、子供の頃って訳のわからない決まりやしきたりを言われるがまま守っていたな、と思った。子供には教えてもらえないあれそれがあって、それでも子供たちの世界は回っていく。そんな話なのかと思った。

 

  • タイトル:八月は冷たい城
  • 著者:恩田陸
  • 出版社:講談社タイガ
  • 読んだ日:2024年3月▽
  • 経路:図書館で借りて
  • その他:前作を読んで続きが気になり過ぎ、読了後その足で図書館へ向かい、公園で読み通した。さらっと読めるのは良い。