とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『甘々と稲妻/1~12巻』雨隠ギド

男手ひとつで娘・つむぎを育てる高校教師・犬塚は、訪れた料理屋で教え子の女子高生・小鳥と出会う。そうして、料理屋を営む小鳥の母からレシピをもらい、手料理に取り組むご飯会が始まった。つむぎたちの成長と、おいしいご飯のものがたり。

 

つむぎが可愛い!

ご飯を食べる時のおいしそ~な笑顔が特に魅力的。見ているこっちが笑顔になってしまう可愛らしさである。

素直で、健気で、元気。そして本当にいい子。第一話での目をキラキラさせながら白米を口に運び「たべるとこみてて!」というシーンは早くも泣けた。そうだよね、お利口さんだからひとりでもご飯を食べられるけど、お父さんと一緒に食べたいよね…。

保育園年中さんの春から小学校1年生の3月まで、つむぎの成長する様子が12巻かけて丁寧に描かれている。元気で可愛いつむぎは周りの大人たちみんなに愛されていて、大切にされる様子に心が温まった。たくさんの愛を受けてすくすくと成長する姿に、読んでいるだけで「こんなに大きくなって…」と親戚のおばさんの気分になれる。子供らしく自分中心だったのが、次第に年下の子を気遣ったり、思う所があっても我慢したり…。こうやって女の子はお姉さんになっていくんだなぁ…。

 

ご飯づくりを教えてくれる女子高生、小鳥ちゃんも可愛い。

彼女もまた健気。仕事で忙しい母と会えずに悲しんだり、犬塚先生とつむぎのことを特別大切に想ったり…。たくさん悩んでいることを、それでも相手には伝えず何事もなく振る舞う姿は健気すぎてすこし悲しい。でも、たくさん考えて自分なりに納得できる形を見つけて昇華させたのはすごいな、強い子だな、と思う。

もちろん、つむぎの父であり小鳥の教師でもある犬塚先生もいい。

食が疎かだったと気づくやいなや苦手な料理に一生懸命取り組み、つむぎとしっかり向き合って子育てしている。(嫌なことをした相手には)謝っても許してもらえないかもしれない、と伝えるシーンは、なかなかこれを言える親はいないぞ!!と思った。

 

(ややネタバレ)

高校教師のシングルファザーと現役女子高生の組み合わせで、先生×生徒の恋愛ものが地雷な私は正直不安だった。生徒側が一方的に思いを寄せる分には構わないものの、先生側が心揺れたり、手を出したりするともう駄目である。そのため「少なくとも現役時代に付き合うことはない」というふんわりしたネタバレを確認してから読み始めたが、想像以上に美しい形で着地した。

そもそも、犬塚先生は第1巻での定期的なご飯会へのお誘いに一度NOを出している。別の先生に相談し、親御さんに許可が出てから、と念を押す姿に安心できた。犬塚先生は正しく教師だった。小鳥もたくさん考えて悩んで、自分がもっとも大切にしたいものを導き出している。すごくよい形で収まったと思う。

 

  • タイトル:甘々と稲妻
  • 著者:雨隠ギド
  • 出版社:グッドアフタヌーン(アフタヌーンKC)
  • 読んだ日:2023年~2024年3月
  • 経路:BOOKOFFで購入して
  • その他:クーポン利用で10円/巻で購入