とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『今様 京都の値段』柏井壽

京都で買える様々なものを値段ごとに切り分けて、京都で生まれ育った著者の思い出や風習と共に紹介するエッセイ。

 

紹介されるのは、「長久堂の桜干菓子60円」、「粟餅所澤屋の粟餅450円」など小さくて安価なものも多い。京都には歴史ある街としての敷居の高さや観光都市としての物価の高さを感じていたが、こういった小さく安くて可愛らしいものを紹介されるとつい和んでしまう。写真も綺麗で、お土産に買って帰りたくなる。

著者は京都で生まれ育った方らしく、文章には著者自身の思い出話がふんだんに取り込まれている。子供の頃に干菓子を食べたとか、蒸し寿司を温めたとか、そういった京都の日常を感じられてほっこりした。

 

この本を読んで京都のだし巻き玉子がどうしても食べたくなり、お店は異なるが翌日急遽買いに歩いた。だしをしっかり感じるふわふわの玉子焼きを食べられて大満足。京都旅行の良い思い出になった。

ほかにも干菓子やお茶、阿闍梨餅、ちらし麩あたりがお土産に買いたくなった(時間と縁がなく入手できず無念……)。

 

著者は生粋の京都人でありながら、いわゆる”外側から見た京都像”も理解し受け入れていると思う。ぶぶ漬け云々に代表される遠回しな嫌味っぽさが怖いとか、しきたりや格式への過剰にこだわりがよくわからないとか……。「京都人はそう見られていますよね」と嫌味なく受け入れて、強く否定することなく、外側の人の視点に沿って書かれた文章に感じた。

 

写真は綺麗で、飾り気のない文章は読みやすく、一つ一つの紹介が長すぎないこともあってすいすい読めた。
調べると他にも京都に関する本を多数書かれている模様。ぜひ読んでいきたい。

 

  • タイトル:『今様 京都の値段』
  • 著者:柏井壽
  • 出版社:PHP研究所
  • 読んだ日:2023年9月◇
  • 経路:ホテル「TUNE STAY KYOTO」にて
  • その他:上記ホテルは京都に関わる本を集めた本屋がある。この本はいわずもがな、京都にまつわるものを紹介した本だから選書されたのだろう。