とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『ネットワーク・エフェクト』マーサ・ウェルズ

統制モジュールを壊して、実は自由の身である警備ロボットの”弊機”。惑星調査任務からの帰還中見知らぬ宇宙船から攻撃を受けて攫われた”弊機”は、人間たちを守り抜くことができるのか。『マーダーボット・ダイヤリー』の続編である長編SF作品。

 

前作に引き続き”弊機”のキャラクターがいい。相変わらず人見知りで、悲観的で、人間たちを守ることに尽力している。プリザベーション連合に身を置いたことで、新たな人間のキャラクターも登場する。警備対象に悪印象を抱かれているのはグラシン以来で新鮮だった。

前作『マーダーボット・ダイヤリー上/下』は中編4作からなる連作集だったが、今回は長編1作で文庫本532ページを埋めている。正直、なかなか長い。こんなに読んでまだ半分だよ…と途中で疲れてしまう感は否めない。ただ、やはりストーリー最後まで読むと面白くて、じっくり読んできて良かったと思える作品だった。

 

 

~~~~ここから重大なネタバレ~~~~

 

 

 

ARTー!再登場は嬉しいけど、まさかこんな形とは思わなかった。メタ的にこんな形で退場とは思っておらず心配はしなかったが、まさかARTが”弊機”を人間たちごと危険に引き摺り込むとは思っていなくて、知った時は”弊機”同様にARTのことを嫌いになりかけた。”弊機”も自分のせいで人間たちを危険に晒したとなれば、自分のことも許せないだろうなと…。でもまぁ、お互いの事情を理解して仲直りしたので良かった。

アメナが”弊機”とARTの関係を恋愛関係のように言うのは不愉快だったな。この作品に恋愛要素はいらないと思っているというか、人の感情の機微が理解できずかつ性行為を嫌っている”弊機”だから恋愛要素は出てこないと思って読んでいたところに、突然ぶっ込まれるから戸惑った。大切な仲間であることに間違いはないんだけど。

 

”弊機二.〇”や”三号”など、人間以外の新キャラも魅力的だった。”弊機二.〇”は鬱々とした日々の記憶がないからか一.〇よりさっぱりした性格なのが面白かったし、”三号”は警備ユニットがみんな”弊機”みたいに遜った物言いじゃないんだとわかって新鮮だった。”三号”は”弊機”より悲観的でなく、迷いながらも決断力と行動力が備わっていて良い未来を選べそうだと思った。

 

ページ数は多いけれど、物語の舞台は探索先の惑星→ARTの中(一部別の探索船の中)→失われたコロニーの地上という限られた場所なので、その点は比較的読みやすかった。視点が”弊機”だけではないのも、新鮮で面白い。

これから”弊機”が新しい環境でやりたいことに取り組む姿を見守りたい、と思わせてくれた。

 

  • タイトル:ネットワーク・エフェクト
  • 著者:マーサ・ウェルズ(訳:中原尚哉)
  • 出版社:創元SF文庫
  • 読んだ日:2023年12月◇
  • 経路:父に面白い本を貸してと言ったら『マーダーボット・ダイアリー』を貸してくれた。見事ハマってしまったので続編も借りた。

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