よしもとばななの、なんとも言えないさみしさ描いた短編集。
残念ながらイマイチ良さがわからなかった。
なんとも言えないさみしさが描かれていることはわかる。妻の待つあまりに美しく理想的な新居に帰りたくない気持ち、幼き日に味わった絶望のせいでどこか上手に生きていけない心、不倫が成就した新婚家庭で夫を待つ現実の不確かさ。言葉に出来ないさみしさがあるのだろうと想像できるが、あまりにも私の人生とかけ離れた状況だ。そしてひどく感覚的な書き方なので、遠く離れた彼ら彼女らの気持ちを理解することが出来なかった。
さみしさを描いたよしもとばななの短編集として、『ミトンとふびん』を読んだことがある。これは近しい人の死によるさみしさだった。幸いにも大切な人が亡くなった経験がないけれど、よく創作で描かれるテーマでもあるから、どうしようもない悲しみを理解することができた。
一方、『とかげ』さみしさはそれぞれがニッチ過ぎて外側からふーん、と眺めている感覚だった。その分、刺さる人にはとんでも刺さるのだろうとも思った。
あとがきには、このように書かれている。
この本の中に収められた小説は、おおよそ2年くらいの間に書かれたものです。全部、「時間」と「癒し」、「宿命」と「運命」についての小説です。
『とかげ』あとがき p.168
……そうなの? たしかに、それぞれの話はどこか救いのある印象で終わる。でも「癒し」のイメージは無いな。読んで私が癒やされたとの感覚もない。ひたすらモヤモヤするだけ。「宿命」にもピンと来ない。私向けの小説ではなかったのだなぁ、と思う。
よしもとばななが男性視点の話を書いているのは意外だったな。あと不倫やふしだらな女性を書くのは相変わらず。
- タイトル:とかげ
- 著者:よしもとばなな
- 出版社:新潮文庫
- 読んだ日:2023年12月◇
- 経路:BOOKOFFで購入