とうつきの本棚

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『逃亡テレメトリー』マーサ・ウェルズ

プリザベーション連合で起きた殺人事件を、警備ロボットの"弊機"が調査する物語。『マーダーボット・ダイヤリー』の続編。

 

今回の"弊機"は、殺人事件の謎解きをする探偵役がメインの働きとなっている。もちろん、これまでも敵の正体と意図を突き止めてきたが、あくまで生きている人間たちを守るために必要だっただけ。今回は(グレイクリス社の刺客が関わっている可能性があるにしても)既に死亡した見知らぬ人間にまつわる謎を解くスタイルで、既刊とは趣きが異なる。

人間たちを守ろうと立ち回る"弊機"が好きだったので、謎解きメインの本作はやや物足りなさを感じた。一方、システムへのハッキングを禁じられた状態で構成機体ならではの調査を進める"弊機"は頼もしく、悲観的な性格や皮肉っぽい言い回しは健在。引き続き"弊機"の活躍を見られることは嬉しい。

 

時系列としては『マーダーボット・ダイヤリー』収録の最終話後、プリザベーション連合に身を置き始めた頃の物語となっている。メンサーはもちろん、ラッティやグラシンなど探索隊メンバーが頻繁に登場するのも嬉しい。

 

また、表題作「逃亡テレメトリー」のほか、スピンオフの掌編2本が収録されている。1つは『マーダーボット・ダイヤリー』でメンサーたちと出会う前の"弊機"を描いた作品、もう1つは『マーダーボット・ダイヤリー』収録の最終話直後のメンサーを描いた作品。どちらもこれまでの物語に深みを持たせていて良い。

 

  • タイトル:逃亡テレメトリー
  • 著者:マーサ・ウェルズ
  • 出版社:創元SF文庫
  • 読んだ日:2024年1月▽
  • 経路:父から借りて

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