とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『鳥と雲と薬草袋』梨木香歩

主に関東以西の地名について、その成り立ちや著者の思い出ぽつぽつと語る掌編エッセイ。

 

見開き1ページの短さで、各地の地名にまつわる話が展開される。古来より脈々と受け継がれて来た地名に感嘆したり、旅行や取材で訪れた時の思い出に浸ったり、縁起のいい地名の由来を調べたり……どれもさらっとしていて読みやすい。

 

何よりタイトルと装丁が良い。「薬草袋」については以下の説明がある。

私が旅の鞄に入れておくごちゃごちゃ袋のことである。常備薬と、それからいつか訪ねたアドリア海の小さな島のおばあさんからいただいた、ローズマリーやタイム、ラベンダーなどを束ねたブーケ。(後略)
P10 タイトルのこと

おしゃれ〜!このタイトルと、本の表紙のアイボリー色にぽつんと佇む小鳥の姿と、初め何編かの読みやすさで手に取った。地名も結構好きだったので。


しかし、同じ調子で続く知らない地名の話に、正直途中で飽きてしまった。

この本は、もともと西日本新聞で連載されたエッセイを集めた本らしい。恐らく、週な一度一編ずつ読んでいくにはいいのだろうが、四十編以上まとめて読むと飽きる。

 

また、読者が九州管内だからできるだけ九州の地名にすることを心がけたらしい。どうりで関東以西の知らない地名ばかり!
知らない土地の美しい地名の由来より、知っている土地のなんの捻りもない(例えば、田んぼの端っこ土地だから町名が“田端”とか)地名の方が面白いだろうな、と感じた。

 

旅の途中、時間潰しに何編か読むにはいいと思う。

 

  • タイトル:鳥と雲と薬草袋
  • 著者:梨木香歩
  • 出版社:新潮社
  • 読んだ日:2023年2月◇
  • 経路:ブックホテル「ランプライトブックスホテル名古屋」にて出会い、読み切れずに地元図書館で借りて