母が経営していた食堂を改築して、パンとスープのお店を始めたアキコ。飼い猫タロとアルバイトのしまちゃんと、おいしいご飯と生い立ちの物語。
同著者の『かもめ食堂』同様に、おいしいご飯屋さんの経営とその周りの人たちのお話だった。料理に使う具材や調味料、盛り付ける器の描写を細かく入れてくれるので、本の向こうにおいしそうな食事の気配を感じられて良い。
また、アルバイトのしまちゃんの存在が気持ちいい。爽やかで体育会系、アキコに程よく寄り添う太陽のような存在だった。
『かもめ食堂』と続けて読むと、どちらも主人公の料理に対するこだわりが同じことに気付く。野菜は低農薬か無農薬。安心できる材料を選んで仕入れるべき。出汁はしっかりとる。大衆向けの料理は味付けが濃すぎる。評判の店でも名前と見た目が良いだけで大したことない。
一つの好みとしては何も問題ないし共感するところも多いのだが、一般的な料理を見下すような物言いの作品を続けて読むと気が滅入る。高瀬隼子
『おいしいごはんが食べられますように』の二谷の気持ちがわかる。好きに食べさせて。
長編小説の部類(文庫版裏表紙に"傑作長篇"とある)だが、さらっと読める。空き時間などにぽつぽつ読むのに良い。
- タイトル:パンとスープとネコ日和
- 著者:群ようこ
- 出版社:ハルキ文庫
- 読んだ日:2023年10月
- 経路:BOOKOFFで購入