とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『三千円の使いかた』原田ひ香

様々な世代、立場、家族構成の女性たちのお金の悩みを綴った、明るい雰囲気の連作短編集。

 

私自身が節約や貯金が好きなので、きっと気に入るだろうと思って読み始めた。結果、大正解だった。

 

舞台は御厨(みくりや)家という一つの家族だ。

散在しがちな独身OL・美帆、節約やポイ活で貯金1000万円を目指す専業主婦で美帆の姉・真帆、自身の病気をきっかけに夫との関係に悩む母、老後資金に不安を覚えてアルバイトを検討する祖母……。それぞれの立場から見たお金の悩みが描かれる。

短編連作集なので、美帆の立場から見れば順風満帆な姉や祖母も実は別件で悩んでいて……とか、別の視点の話で美帆のその後の過ごし方がわかって……などの繋がりも感じられて面白い。

 

また、『三千円の使いかた』はお金に関わる説明がかなり詳細に語られる。

例えば、姉の真帆が取り組むポイ活のシーンでは「ポイントサイト経由でクレジットカードを作るとお小遣いが貰える仕組み」について中々詳しく説明されている。他にも、節約の方法や地方銀行の金利優遇キャンペーン、離婚した専業主婦が将来貰える年金の話など、結構細かい話が載っている。お金に詳しい人なら「ああ、わかる!!」と共感でき、詳しくない人なら「へぇ、そんな仕組みがあるんだ」と勉強になると思う。

 

お金に直接関わらない、微妙な心理描写やモヤモヤを描くのも上手い。「好きな人と結婚して、節約しながら充実した毎日を送っていたのに、玉の輿婚約をした友人のキラキラ光るダイヤの指輪を見てからモヤモヤする」みたいなやつ。

 

唯一、祖母と近所付き合いをする男性の話は余計だったと感じる。他の話が女性視点なのに突然の男性視点に違和感を覚えた。また、私自身に結婚・出産の予定がないため、男性への祖母の説教は居心地が悪かった。まあ、あれは男性の「子育てはコスパが悪い」といった趣旨の発言が不味すぎたのもあるけど……。

 

癖のない文章で軽快に進むので、取っ付きやすく読みやすいと思う。期待以上にお金の話を突っ込んで描いた小説で、勉強にもなる。

他の人にも勧めたい作品だと思うし、私も原田ひ香さんの作品をもっと読みたいと感じた。

 

  • タイトル:三千円の使いかた
  • 著者:原田ひ香
  • 出版社:中公文庫
  • 読んだ日:2023年11月
  • 経路:BOOKOFFで購入