とうつきの本棚

本に纏わることの記録。

『強運の持ち主』瀬尾まいこ

元営業OLの占い師・ルイーズ吉田が、ショッピングセンターの片隅で出会う人たちの悩みを解決していく小説。

 

ルイーズ自身が占いを信じていないのが良い。前職の営業スキルを活かせる!と求人広告に応募し、実際にその話術でお客さんを引き込んで独立している。結局はお客さんの求めるそれっぽいことを伝えれば商売として成り立つ、という姿勢は見ていて気持ち良い。私自身、対面の占いは単なる話術だと思っているので納得する。そりゃ、本当に運勢の色とかが見える人もいるかもしれないけど。

 

ただ、そういった話術による導きに留まらず、その人自身と向き合う(向き合わざるを得ない)ことになるのが本作で描かれる人たちとの出会いである。その人たちは話が不明瞭だったり、いやに馴れ馴れしかったりして、正直第一印象は良くなかった。でも、それぞれの話を読み終わる頃には好きになっていたから、瀬尾まいこさんの書き方はすごいなぁと思う。

 

占い師が主人公だけど、大事な人と通じ合うには面と向かって話をするのが大切だっていう物語の方向性が一貫してあったのも良かった。読むとほっこりする小説。また読みたい。

 

  • タイトル:強運の持ち主
  • 著者:瀬尾まいこ
  • 出版社:文春文庫
  • 読んだ日:2023年9月◇
  • 経路:BOOKOFFで購入